不快な音
先日も告知しましたが、「あるテーマを設けていろんな人がそれぞれ作品を作る」という企画の別CDを紹介したいと思います。実は斬り始め一号のサークル「Everfades」からの作品で、「Grimnotes」というCDです。直訳すると見出しのタイトル通りになります。
このCDは一言で言うと、ネットゲームで有名な「ラグナロク・オンライン」(以下RO)の1つのBGMを3人の作家さんがアレンジしたミニCDです。しかも、メインコンセプトが全員ピアノソロなので、「原曲も、使用音色も同じ」という環境の下、3人がどうアレンジするかという実験的な作品になっております。
実は昨日の話と言い、流れ的に丁度良かったので、普段は間隔をあけてレビューをしているのですが、急遽次の日(今日)に持ってきたわけです。
まず真っ先に受ける印象として、「原曲をそのままピアノに移す」という「アレンジとして評点にならない要素」を避けたという点です。前述したように、「原曲も、使用音色(ピアノ)も同じ」という環境で3人がそれぞれアレンジするとなると、必然的に「構造レベルの改革」が必要なのかなと思いました。
さらに「原型をとどめないほど崩す」という支離滅裂な要素もアルバムの中盤(いわゆる2曲目)に持ってくることによって活かしているような気がします。偶然なのか意図的なのか、1曲目の終わりから「原型からの離反」を感じ始めるので、実は2曲目に意識が移り易いという狙いなのかもしれません。そして3曲目に再び原曲のフレーズを高らかに奏でることで、聴き手に原曲の存在価値を再認識させているのだと考えてみました。
では3曲だけなので、1曲ごとに特徴を列挙してみます。
1曲目は比較的原曲に近い構成で、
- 原曲の終わりのメロディをイントロに持ってきている
- しつこいほどのアルベルティバス*1
- なぜかTVのCM前アイキャッチのごとく「ピラミッドダンジョン」の一節が入る
- 移行部は基本的に反復進行
- 後半から2+3拍子
- 最後にイントロの数小節を持ってきて終わり
ちなみに3番目は紹介したWebページの試聴からも確認できますね。
2曲目はメインメロディを使っているだけで、原曲の重力圏内から脱しています。
- 序盤のベース進行がかろうじて「原曲のメロディ」としてとどめている
- 連打。ひたすら連打
- 響きが微妙な2声部分
- この先は原曲の要素がほとんどない
- 同音連打系(トッカータ系*2 )
- 全体を通してあえて印象を変えることによって統一感よりも遷移感を出している
これも2番目あたりが試聴で確認できますね。
3曲目は再び原曲の印象に戻ってきますが、どことなく国が変わってしまったイメージになっています。
試聴は丁度アドリブ全快あたりですね。
一通り特徴を挙げてみたのですが、これが「良いか悪いか」は聴いた人それぞれが判断していただきたいところです。私も今回これらを「良いところ」として挙げているわけでもないです。
後一つ、面白いところとして3曲とも「調」が違うところですね。「調の違い」は「色の違い」と似たような感覚で、この違いだけでも印象がずいぶん変わってきますしね。
こういう企画モノは何かしらこだわりが出ているようで、非常に面白いところでもあります。やはりコラボ企画は何かしらの「テーマ」があったほうが、全体として面白いものが出来上がるのではないかと思います。逆に言うと、そうしないとただの「万国ビックリショー」になるだけですから…。
しかし今回のネタは元ネタがROってことで、ちょっと微妙でしたね。基本的にROやる時、別のBGMかけてやってますので、原曲に思い入れがあまりないのですよ(汗