すこし真面目に考察してみる

 最近、同人音楽について考えを述べているサイトを巡回していますが、まずこういう考えをする事自体、良い事だと思います。また、その考えをパブリックな場で主張する事も「読者に考えさせる機会を与える」意味でよいことでしょう。
 この文章を読んで思った事を少し書きたいと思います。まずはじめにこちらの文章を読んでいる事が前提になります。そうしないと、少なからず筆者への誤解を生じると思ったからです。2つの文章を自分なりに要約しますと、まず前提の文章から、

  • 同人音楽の価値はどこで見出すのか?
  • 原曲だけで判断してCDを買ってしまうと、製作者の驕りが生じるかもしれない。
  • 製作者が精進しようと思う機会を「聴き手」の方から奪っている。
  • 聴き手が作品を批評できるようにスキルアップしなければならない

次に今回挙げる文章から、

  • 聴き手がスキルアップする事によって、作り手に「現状では満足しないんだぞ」という念をそこはかとなく知らしめる。
  • 稚拙なCDを作った人ではなく、買った人に文句を言うべき。

という風になっていると考えます*1。今回挙げた文章だけ読むと、ものすごい結論に達しているように見えますが、前提から考えていくと、ある程度納得できる結論かと思います。
 ここからは私の主観なんですが、すなわち作り手が稚拙なものを作ってしまった場合、作り手に物申してしまうと、作り手は「この人は自分の音楽に合わないんだな」と理由を付けてそれ以上の思考を停止してしまいます。逆に買い手に物申す事によって「結果的に」作り手への反応をしなくなると、作り手側は「反応が無い。何がいけなかったんだろう」という思考に移りやすく、自分の作品を見つめなおす機会が出てくるかと考えます。作り手の心理からして、「無反応」が一番ショックです(苦笑)。
 と、後半は自分が独自に解釈したものなのですが、自分はやっぱり「買い手が買い手を批判する」のは良くないのではないか、と思います。ただし「自分はこの作品について、こういったところがダメだと思うな」と意見を述べる程度はすべきだと思います。これは聴き手の心理なのですが、「どーしよーもない曲」でも聴き手の心理状況、体調、現状によって「すげー」って思うときがあるのです。そのときは素直に受け入れるべきだと思います。そういう意味でも、誰かにとって「これはダメダメ」と思うものでも、他の人にとって「この曲が救いになった」と思う人もいるでしょう。これに真っ向から釘を刺すのは良くないかもしれません…。
 やはり難しい問題ですね。聴き手も現状で満足してしまうと、作り手も現状維持しかしなくなる悪循環は確かに否めないです。とりあえず自分は「作り手が自分の作品をちゃんと批判する」ことを奨めます。自分の曲を聴いて何か引っかかる点がないか、違和感を感じるところが無いか、など考察して次に生かすべきだと思うのです。
 最後に私が尊敬する音楽家の一人、ラヴェルのエピソードを持ってきたいと思います。
 ある日ラヴェルの弟子の一人が自分の作品を先生に見てもらおうとやってきました。ラヴェルはそれを受け取ると「君はこの作品について何か不満はあるかね?」と問うたところ「いえ、まったくもってありません。全てが上手くいって大変満足しています。」と答えました。するとラヴェルは皮肉交じりに「では、君はこれ以上作品を書かないほうが懸命だね。君はもう自分にとって完璧な音楽を創造したのだから。」

*1:もしこの見解間違いだったら申し訳ありません(汗)