昨日は

 いや、すごかったです...。いろんな意味で緊張した2時間(弱)でした。個人的には「てんとう虫」にしか興味なかったんですが、盛り上がりの山とか考えても丁度良い構成だったかもしれません。中トリの弾き語りもすばらしかったし、最後の曲もしっとりとしてて良かったのではないでしょうか?
 気になったのは中途半端なMCぐらいですか。とりあえずこっち向いて喋れ。でも、頑張れば何とかなると思うから、頑張って喋りの練習してください。期待。

 そういえば多くの演奏にはこの手の音楽ではあまり出てこない「斬新な転調」があったのですが、アレは最近流行っているのでしょうか?(ぇ

さて、明日は

 http://www006.upp.so-net.ne.jp/taket/first_sounds.html
 こっそりと聴きに行きます…。当日でも30席ほどあいているらしいので、時間がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?
 個人的には「超絶過ぎるアレンジ」だったKuroyaさんの「てんとう虫」が生演奏で聞けるので、非常に楽しみです。

結言

 結局のところ「デスクリムゾン」みたいなアレンジに行き着いたら泣いちゃいますから、ってこと(;´д`)
 割とクセナキスのシナファイのピアノパートがそれっぽい…。弾けたとしてあの音響だとやる気も起きない。なんて、まさしく「デス様をやろう」とは思わないのと同じなのかもしれない(ぇー

バランスを考える。

 昔、ゲームクリエータの飯野氏が言ってたことで、「ゲームの面白さはユーザの実力で左右される部分と運に左右される部分のバランスが重要だ」というのを思い出しました。例えば、「じゃんけん」は大体は運で勝敗が決まります。逆に「ハンマーとヘルメットが1個ずつ用意されていて、2人がどちらかを取って相手を叩いたり守ったりするゲーム(タイトル長いw)」は完全に両者のスキルで決まります。これをあわせると「じゃんけんで勝った人はハンマーを、負けた人がヘルメットを取って、叩いたり守ったりするゲーム」に発展していくのです。
 て、ここまで書いて気が付いたのだが、これを楽器演奏に写像すると、「ケージとリストを合体させろ」と?_| ̄|○

楽器演奏はゲーム?

 前回の記事のコメントにも書いたのですが、「弾く楽しみ」の中で「難所を弾ききる」というのはゲームで言うところの「難所をクリアーする」に等しいのではないかと思います。それでちょっといろいろ思ったのですが、例えば楽器を演奏する時の楽しみには、今上げた「難所を弾ききる」楽しみと「演奏している音楽を聴く」楽しみの両方があるような気がしました。ゲームにたとえると、「難所をクリアーする」楽しみと「ゲーム内の世界観やキャラクターに感情移入する」楽しみに置き換えられるのではないかと思うのです。
 「技術的な部分の達成感」と「世界観に没頭する」。この両者のバランスは音楽でもゲームでも非常に重要な部分なのかもしれないと思っています。音楽の場合、「演奏の難易度」と「曲の芸術性」に置き換えられると思うのですが、ゲームの場合「ゲーム性」と「シナリオ性」に置き換えられるのかな…。
 その両者のバランスが崩れるとどういうことになるのか。例えばゲームでは「ゲーム性」を追及しすぎて「難解なモノ」になってしまい、いわゆる「クソゲー」と呼ばれるものになってしまったり、「シナリオ性」を追求しすぎて「俺ってゲームやってるの?映画見てるの?」みたいな感じになってしまったりと言った経験があるのではないかと思います。
 音楽の場合もこのバランスが崩れてしまうと似たようなことになるのかなと思いました。「難易度」「技」ばかりに意識が行ってしまい、「聴いていて楽しくないもの」は19世紀後半に大量生産されたと言われています。歴史がそれを証明しているのですが、リストが現役を退いてから50年くらいの間、有名なピアノ曲といわれるものがぽっかり抜けているんです。どちらかというとその頃は交響曲を始めとするピアノじゃない曲がたくさん挙げられるのではないでしょうか?しかし、これは「ピアノ以外の曲を作るのが流行っていた」わけではなく「大量生産されたが、現代まで残らなかった(淘汰された)」と言われているのです。実際にコンポーザ・ピアニストはリストが現れてから大量に生産されたのですが、結局のところ「技の披露」以外の何物でもない曲ばかりが生まれ、消費され、忘れられていったそうです。
 それじゃ、逆の「芸術性」に拘りすぎたものってどんなのがあるか、と考えてみると……、なかなか良い例が浮かびませんね……。サティのピアノ曲とかが近いのかなぁ。響きとかは好きなんだけど弾こうとは思わない。そんな感じの曲。あとは前衛音楽みたいに「設定だけ奇抜で理解不能なアニメ」みたいな感じのとか(ぇ

アレンジの方向性

 例えばゲームのBGMをアレンジするとき、色々な方向性があると私は思います。一つは、BGMを聴いてそこからインスピレーションを受けてアレンジする方法。もう一つは、ゲームの内容や設定からインスピレーションを受けてアレンジする方法。その他にも色々方向性があるかと思いますが、今回紹介する作品は東方妖々夢から「幽雅に咲かせ、墨染の桜〜Border of Life」のアレンジを2つほど。
 ちょうど、この曲のピアノアレンジの楽譜を2種類持っていましたので、それぞれの特徴を挙げつつ、その違いを吟味してみようかと思います。まず、今回紹介するアレンジをされた方2人を挙げないといけませんね。サイト「雪のあしあと(http://park5.wakwak.com/~yohka/)」のようかさん、そしてサイト「アルトノイラント(http://home.att.ne.jp/alpha/hiroyo/)」のひろよさんです。以下、ようかさんがアレンジされたもの*1を「ようか版」、ひろよさんがアレンジされたもの*2を「ひろよ版」と称させていただきます。敬称を外すことをお許しくださいませ…。

(12/8追記)
 両者から楽譜の引用許可が得られましたので、所々に楽譜を引用させていただきます。なお黒色の部分は(枠線以外)製作者のオリジナルで、赤いのが私が注釈した部分です。
 何も考えずに画像をアップロードしたら大きくなってしまいました。小さいと見難くなってしまいますし、別窓で開くとフォトライフの特性上、私がアップしている任意の画像が見れてしまうので、このままの大きさでご容赦ください。

 まず始めに前奏から見ていきます。原曲の前奏は上昇系アルペジオを伴奏としたメインメロディで始まります。
 ようか版は原曲と同じ構造で、メインメロディを単旋律にし、伴奏をコラール風に和音で添えています。(1〜8小節まで)
 一方、ひろよ版では開始から構造が変わっています。1〜9小節までは「幽雅・・・」ではなくて「ボーダーオブライフ」の方から引用していると考えられます。「ボーダー…」の終盤のギターっぽいソロの部分を、最初に持ってきていると考えられますね。そして、ひろよ版の前奏はさらに拡大されていて、「幽雅…」の中盤の旋律を用いて前奏を終わらせています。(10〜18小節まで)

  
 次にメインメロディに移る前の移行部、原曲では三連的な下降系旋律でメインメロディに繋げていく部分を見ていきます。
 ようか版では音響的な装飾をもって、音響的にも豪華にしています。前奏で「疎」な音響からここで「密」に持ってくることで、対照的な印象を出していると思います。(10〜17小節まで)
 ひろよ版では前奏の終盤では音響的に「密」になっていたものを、この部分で逆に「疎」から始まって、だんだんと「密」になっていくという方法を取っているようです。(19〜26小節まで)

 
 次のメインメロディは、両者とも構造上の変化はほとんど無いので音響的な違いを挙げていきたいと思います。
 まず、ようか版では旋律の音域が高めになっています。単旋律ではなく和音旋律で音響的に厚みを持たせているのも特徴です。さらに、1回反復したあと(18〜25小節の後)、今度は旋律の装飾を変えています。これはおそらく「単純な反復をさけるため」という念から来ているのではないかと推測します。(26〜33小節)

 一方ひろよ版では、旋律がようか版より1オクターブ低くなっており、またほとんど単旋律+若干の和音で構成されています。特徴的な部分として、34小節目の拍子が8分の10となっており、四分音符1つ分リズムが添加されています。ここは多分4拍子に慣れている人たちが聴くと、予想外のズレを感じて、かなりの違和感を感じることかもしれません。(27〜42小節)

 
 次の間奏1の部分、原曲ではメインメロディの音響から一転して、若干厳かになっています。典型的な間奏といった感じですね。
 ようか版では、右手の装飾が特徴的で、ここの楽句の印象を根付かせています。(34〜42小節)
 ひろよ版は、音響的にかなり「疎」な感じになっていて、46小節からオクターブを上げているところが違います。また、50小節目で音楽の流れを一端スローダウンさせているところも特徴ですね。(43〜51小節)
 
 次のサブメロディ1になってくると、編者の個性がいっそう際立ってきます。
 まずようか版では、伴奏に3連符を持ってくることによって、クロスリズムを導入しています。2回均等に叩く間に3回均等にたたくという感じで、今までとは若干印象が変わってきます。そして、原曲では2回繰り返す部分を1回で次に移っているところも特徴的です。このような省略系も手段としてアリだと思います。そしてここの締めとして、原曲と似たような音響を再現すべく、50小節目の後半で上昇系のスケールを持ってきています。(42〜50小節)
 ひろよ版の方では、1回目(52〜60小節)と2回目(60〜68小節)でメロディのオクターブを変えているところ、伴奏を若干変化させているところが特徴的です。そして、なんと言っても68小節目の最後に出てくる「4本同時のグリサンド」。両者とも原曲の音響を再現すべく、両者各々の方法を取ったわけですが、こういう違いを見ると非常に面白いと思います。

 
 ここから後半のサブメロディ2に入ります。手前のサブメロディ1から一気に音響的な盛り上がりを見せている原曲に対して、両者がどのように編曲しているのかを見ていきたいと思います。
 ようか版では、左手の伴奏が16分音符系になり中音域がうねりをあげるような音響を作り上げています。メロディは6度音程系になっています。また伴奏において、53小節のような上昇型を2回を繰り返す時の跳躍が難所かもしれません。(51〜57小節)
 ひろよ版では、メロディの厚みも増えて、伴奏が低音連打系になります。77小節から、低音のオクターブ進行が強烈で、音響的にも「カオス」寸前にまで達しているような感じがします。ここでひろよ版は原曲より1回多く反復させているところに注意したいです。84小節目から左手を単音にすることで音響も一気に「疎」にすることによって際立たせていると思います。楽譜を見ると親指だけで弾く指定があるのですが、そうした意図として本人が自身のページで言及されているので参照してみてください。(69〜92小節)

 
 次は間奏その2です。原曲はそれまでの音響から少しはなれて、この部分は最後のメインメロディのためのつなぎとしての準備区間だと考えられます。
 ようか版は原曲のイメージと変わらず、同じように音響を抑えている感じがします。まぁ、ここで逆に音響的に盛り上げようとする人もなかなかいないと思いますが……。ここでの特徴として小節の前半と後半でペアになっているところです。例えば最初の59小節をみてもそうなのですが、前半が8分音符系、後半が16分音符系となっていて、交互に現れます(一部例外あり)。67小節からも同じような組み合わせで、さらに装飾を変えています。(59〜74小節)
 一方ひろよ版では、伴奏の間隔を「疎」にすることによって今までの印象とまったく違った演出を見せています。93小節からの伴奏だけ着目していくと、最初は「全音符」が2つ、その次は半分の2分音符が2つ現れ、次にさらにその半分の4分音符が4つ現れます(休符も考慮して)。さらに100小節目からは8分音符と間隔がさらに狭まってきます。(93〜107小節)

 
 いよいよラストのメインメロディです。原曲はメインメロディの後半だけ提示して、ループのためにさっさと終わってしまいます。ループを考えないピアノ曲としてはここから先をどうするかが見物だと考えます。
 ようか版では、音響もいっそう豪華になり、右手が8分音符系の装飾、左手が16分音符系の伴奏で統一されています。そして86小節で、突然と和音を奏でて短いコーダを添えて締めくくっています。
 ひろよ版では、右手がオクターブ旋律、左手が8分音符の和音伴奏で派手に盛り上げています。演奏する上ではかなり難しい部分だと思いますね……。きつい跳躍もありますし、右手がオクターブ旋律のみになっているのが唯一の救いだと思います。というか左を専念させるために意図的にこうしたのではないかと感じられます。そして、ひろよ版は独自のコーダを持ってきて締めています。コーダはイントロと同じで、楽想記号などの若干の違いがあるぐらいです。ここで主題回帰することによって、この曲の全体的なイメージを定着させていると考えられます。
 
 長い長い解説が終わりました……。全体的に見直してみると、ようか版のほうは「多彩な装飾」があり、ひろよ版は「音響のメリハリ」があるような気がします。同じ原曲、同じ楽器何にもかかわらず、これだけの違いがあったというわけです。両者がそれぞれ「やりたいこと」を盛り込んでいて、弾いていて楽しくなる曲(単純なパッセージを避けることによる)や、劇中の詩的イメージを取り入れた曲など、まったく違った方向性を見せているかと思います。

 ちなみにこの2つを取り上げた理由として、編曲者のやりたいことが見えていたからだと思います。この曲のピアノ編曲は他にもたくさんありますが、その他はどれも「編曲者の意図」が見えないものばかりで、あえて感じたものとして「この曲をピアノで弾きたかった」という印象だったので、ここでは取り上げなかったのです。

 あと、この解説には譜例として楽譜の一部を添えようかと思いましたが、許可を取っていないのでやめておきました。これについてもし「一部の載せてもいいよ」と編者本人のお告げがあれば改めて修正するかもしれません。ちなみに載せるといっても、途中で「○○小節のように」と書いてあるくだりにその小節のみを切り抜いて貼り付けるような感じになるかと思います。

*1:サイトから「音楽室」に音源と楽譜が公開されています。

*2:サイトから「Diary」→9月23日付けの日記に音源と楽譜が公開されています。